その後の「自分ちの庭」

小田急線・世田谷代田駅前。2022年11月30日撮影)

 

 「自分ちの庭」こと、小田急線の下北沢〜世田谷代田界隈。私たちの身近な生活圏。その世田谷代田周辺がメインのロケ地で出てると知って、観始めたテレビドラマ「silent」(サイレント)。

 その後も観ています。

 

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 ふとしたきっかけでまず第5話と第1話を観たのだが(2022年11月14日の日記参照)、続いてその間の第2話〜第4話を観た。第1話を観た「TVer」の無料見逃し配信では第3話まで自由に観ることができるので、そこで第2話・第3話を鑑賞。第4話だけはフジテレビ独自の配信サイト「FODプレミアム」に登録しないと観られず、無料お試し期間だけ登録して視聴した。

 これで第1話から第5話まで自分の中で繋がったので、改めて第5話を観返した。最初にいきなり第5話から観たせいで不明な点が多かったのだが、この二度目の鑑賞でそれらが解消。併せて、見逃していたストーリー上の重要ポイントをいくつか認識できたのは収穫だった。

 そして第6話以後は地上波の本放送を予約録画してあるので、その録画で第6話・第7話を観た。直近の放送分(第8話)まで、あと一歩に追いついたところだ。

 

 

 もちろん、新たに観たこれらの回でも、随所に世田谷代田や下北沢の周辺の、私たちには馴染み深い場所があれこれと登場。中でも、第4話で青羽紬(演:川口春奈さん)と戸川湊斗(演:鈴鹿央士さん)が一緒にいるのを桃野奈々(演:夏帆さん)と共にいた佐倉想(演:目黒蓮さん)が見かける場面のロケ地「世田谷区立シモキタ雨庭広場」(上の写真、2022年7月23日撮影)は、私たちが散歩や用事などで三日と開けずに訪れる場所だ。

 この「シモキタ雨庭広場」は小田急線の世田谷代田駅下北沢駅のほぼ中間にあり、両駅間の線路跡の再開発施設としては一番最後に、今年7月に完成してオープンしたばかり。名前の通りに集中豪雨などで多量の雨が降った際に、雨水を集めて地下に貯留・浸透させる窪地状の植栽地「雨庭」を備えている。災害対策の役割も担っている広場なのだ。

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 ロケ地に目を凝らすばかりでなく、肝心のドラマの内容も大いに楽しんで観ている。登場人物ひとりひとりの人物像にすごく厚みがあって、とても存在感がある。だから会話の場面だけでドラマが生まれる。胸アツになる場面がてんこ盛り。特に第6話の、夏帆さんが演じる生まれつき耳が不自由な奈々が思い余ってケータイを耳に当てる場面には、せつなさが極まって目頭が熱くなってしまった。

 長いことNHK大河ドラマしか観ていなかった身としては、最近の日本のテレビってこんなにクオリティの高いドラマ作りをしているのか!と、正直少々びっくりしている。いや単に「silent」がレヴェル高いだけかもしれないが。

 最終回は12月22日の予定だとか。

 12月22日?

 私たち夫婦の結婚記念日ではないですか。

 なんとも嬉しい偶然である。

 

 

ヨボヨボになっても

 

 いやあ、本当にやるとは正直思っていなかったので、びっくりしました。

 何って、もちろんインディ・ジョーンズIndiana Jonesですよ。

 しかもハリソン・フォードHarrison Ford主演で。インディは彼以外にないのだから当然なのだが、何しろハリソン御大は当年とって80歳、撮影中はまだ大台に乗っていなかったかもしれないが、いずれにせよ十分に「おじいちゃん」だ。

 

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 シリーズ新作の正式タイトルは"Indiana Jones and the Dial of Destiny"。前作「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」"Indiana Jones and The Kigndom of The Crystal Skull"がシリーズ第4作というよりは「三部作+1」だった私にとって(2008年7月20日の日記参照)、今度の新作は気軽に「第5弾」とか呼べません(笑)。しかも物語の舞台が1969年だとか。もう私も妻も生まれていますが(もちろん赤ん坊ですけど)。最初の三部作は全て第二次世界大戦を控えた1930年代が舞台で、インディの物語は私の中では「歴史の中のファンタジー」だったのだから。なので「自分たちが生まれて生きている時代」にインディが活躍する物語ができるなんて……。感慨一入、と言っていいのか(笑)。

 


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 でも予告編を観ると、なんだかんだでもワクワクしちゃうなあ。

 いやあ、おじいちゃんがんばってます。すごいです。60代で出演した前作のときも十分にすごかったですが、今回のハリソン・フォードさんは撮影当時もうすぐ傘寿という、人間の長寿化著しい昨今であっても立派な「お年寄り」のご年齢。使い古された言い回しで誠に恐縮だが「若いもんに任せられねえ」あるいは「若いもんに負けられねえ」としか言いようのないご活躍ぶり。旧友のサラー(演・ジョン・リス=デイヴィスJohn Rhys-Davies。彼も78歳ですか)も出てくるし、この予告編だけでも目頭が熱くなってくる。

 さらに、あの「レイダース・マーチ」をいい感じにノスタルジックに、そして壮大にアレンジしているものだから、さらに胸アツ。音楽担当のジョン・ウィリアムズ御大John Williamas(こちらはなんと御年90歳!)はこの作品で映画音楽の仕事から引退を表明しているらしいので、それだけでも観るべき?ですよね!

 うん、なんだかんだ言っても、これはきっと観るでしょう。観てしまうでしょう。

 間違いなく「第5作」ではなく「三部作+1の、そのあとどうしたの?」の物語なのだとは分かっているけれど、ハン・ソロもリック・デッカードも「その後」が語られました。それは間違いなくこれらの役を演じることのできる唯一無二の存在、ハリソン・フォードという俳優がいなければなし得なかったこと。であれば、彼に「インディは、その後どうしたの?」ともう一度くらい聞いてもいいように思えてしまう。

 多分、これが最後だけれども。

 

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 映画公開は来年6月の予定だそうです。

(冒頭の写真は、もちろんイタリア・ヴェネツィアVeneziaにあるサン・バルナバ教会Chiesa di San Barnaba。シリーズ第3作「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」"Indiana Jones and the Last Crusade"のロケ地として有名です。2019年6月26日撮影)

 

【2022年12月7日追記】

 邦題が「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」と発表されました。このシリーズでは、原題は第2作以降常に「and」が入っているのだが、それが邦題に反映されて「と」が使われたのはこれが初めて。時代の変化か。単なるディズニーの逐語翻訳主義の故か。

 併せて、2023年6月30日に日米同時公開が決まったそうです。

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フライパン煮込み、再び

 

 2022年10月26日の日記で少し言及した、若山曜子さんの好著『フライパン煮込み』の続編『フライパン煮込み2』(主婦と生活社)。

 我が家では発売後さっそく手に入れたが、ひと通りざっと眺めた私の妻が言うには、前著より一捻りした料理が多い印象とのこと。まあ二冊目ということで、最初のものよりはやや「変化球」が増えるのはよくあることである。

 

 

 それでも前著同様すぐに使えるレシピが多いようだ(ひとつだけ、我が家では地球が滅亡に瀕しても絶対に作らないレシピがあったが)。この日の夕食には、早くも同書からのレシピで妻が作った料理が食卓に上がった。本の一番最初に「基本の煮込みを作りましょう」と紹介されている、鶏肉の柚子胡椒クリーム煮だ(上の写真)。

 レシピでは鶏もも肉を使用しているが、この日の我が家は鶏むね肉を採用。脂が少ないので私好みなのだ。レシピ通りに予めすりこぎで鶏肉を叩いたので、煮込み後も柔らかく仕上がってとても美味しい。例によって妻は元レシピからかなりアレンジ。レシピにないキャベツとしめじを加えて、野菜のボリュームを大幅にアップ。代わりに塩の量を減らして我が家向きの味付けに。まあ若山曜子さんご自身も本書の中で変更や追加を奨励しているくらいなので、どんどんアレンジすべし。さすがに若山さんはよく分かっていらっしゃる。レシピというのはある種の「基準」であることを。

 何しろ生クリームと柚子胡椒の組み合わせが実にユニークで、これが意外にも(?)なかなか美味しい。本書のレシピの説明では、こっくりと重くなりがちなクリーム煮を柚子胡椒で軽くしたと書かれている。だが私にはむしろ、柚子胡椒のピリッとした辛さをクリームのコクが角を取って丸くしてくれたように感じた。また、クリーム煮の洋風料理感の中に柚子胡椒の和風なテイストを差し込んだようにも。これこそ、真のフュージョン料理。現地での修行を経て基本から身につけたフランスの食の感覚と、日本の日々の暮らしの中で培われた食の良さをうまく組み合わせる、若山さんならではの一品だ。

 翌日の夕食にも、この本からのレシピをもとに、豚もも肉と大根の胡麻味噌煮が登場(下の写真、元レシピでは豚バラ肉を使用)。どんどん作ってみないとね。

 胡麻味噌の風味も芳しくて実に美味しいが、それだけでなく大根に千切り生姜そして長葱が入っているので、食べると身体が芯からよく温まる。これからの寒い季節に重宝しそうな一品だ。

 

 

(2022年12月5日投稿)

 

世田谷代田も「自分ちの庭」ですが、何か?

小田急線・世田谷代田駅前から富士山を望む。2022年11月10日撮影)

 

 ふとしたきっかけから、現在フジテレビ系列で木曜日夜10時から放送中の連続テレビドラマ「silent」(サイレント)の、11月5日放送の第5話を観た。

 第5話を観たのは、このドラマの存在を知り観てみようと思った時点で最も早い放送分だったから。この回だけ観たかった特別な理由があったわけではない。

 

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 NHK大河ドラマ以外の連続テレビドラマ(特に民放の)をもうここ何年も観ていない私が、急に一体どうした風の吹き回しか。

 理由は簡単。「silent」の舞台のひとつとして、小田急世田谷代田駅が実名で登場し、その周辺共々主要なロケ地として頻繁にドラマ内に登場するということを知ったからだ。

 世田谷代田ですと? 我々の日々の散歩コースのひとつではないですか。 ウチの庭で何してんねん!? というワケです(笑)。

 

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 生まれ育った世田谷区代田の実家へ昨年9月に(家を建て替えて)戻ってから(2021年12月30日の日記参照)、インスタグラムに近所=下北沢周辺の写真を投稿する際には、よく「#シモキタは自分ちの庭」というハッシュタグをつけるようになった。半分冗談、半分本気で。それほどに下北沢の街は我が家からとても近く、文字通り「自分ちの庭」のような感覚。私のホームタウンだ。

 小田急線の世田谷代田駅はその下北沢のすぐ隣の駅で、とても近い。正直、下北沢から歩いても高が知れている。小田急線の地下化に伴い2年前の春に線路跡地に「BONUS TRACK」(ボーナストラック)が開業し、下北沢から世田谷代田まで線路跡を通って直線で行けるようになってさらに「近く」なった。もちろん、我が家からも歩いて10分とかからない。下北沢が自分ちの「前庭」なら、世田谷代田はさしずめ「横庭」だ。

 

bonus-track.net

 

(「BONUS TRACK」にて。2022年11月1日撮影)

 

 そんな我が家の庭に等しい世田谷代田やその周辺がロケ地に使われているというのだから、どんな風に映っているのかドラマを見てみたい気持ちになるのは人情というもの。生まれ育った代田や下北沢への郷土愛に溢れている私としては、日常生活の中でとてもよく親しんでいる地元の街が、ドラマの中でどんな風に使われて、視聴者にどのような印象を残すのか、興味津々だ。

 なんでもドラマを企画する初期段階から小田急電鉄が関わっているそうで、メインのロケ地に世田谷代田駅を提案したのも小田急側だったらしい。線路の地下化で駅舎を建て替えたばかりでとても綺麗な上に、下北沢という東京でも類を見ない唯一無二の街のすぐ隣でありながら乗降者数がさほど多くない(=ロケがしやすい)というのが決め手だったらしい。

 というわけで、先述の通り、その時点で最も早い木曜日の11月5日に放送された「silent」第5話を録画しておき、数日後に鑑賞した。ドラマそのものはたいへん面白く観たのだが、この回には世田谷代田駅やその周辺はロケ地として登場しなかった。残念。

 調べると、民放共同で運営している公式テレビ配信サイト「TVer」で「silent」の第1話〜第3話が配信で観られることが分かり、さっそく第1話を観た。長時間パソコンの小さな画面に目を凝らし続けるのは私の弱った目には非常にしんどいので、目の負担を軽減すべく手持ちのMacBook Proを我が家の40型テレビに繋ぎ、その画面をテレビにミラーリングして大きい画面で鑑賞した。

 

tver.jp

 

 この第1話では私たちの期待通りに、世田谷代田駅がご丁寧に駅名の看板入りで何度も画面に登場。さらには周辺の、私たちがよく知っているお馴染みの場所がいくつも出てきて実に楽しかった。

 川口春奈さん演じる主人公の青羽紬が目黒蓮さん演じるかつての恋人・佐倉想と衝撃の再会を果たす、この回のクライマックスシーンは世田谷代田駅のすぐ前、環七こと環状七号線にかかる「代田富士見橋」(名前の通り、晴れた日はここからの富士山の眺めが実に美しい)が舞台。紬が現在の恋人である戸川湊斗(演:鈴鹿央士さん)と語らいながら歩くのは、下北沢と東北沢(世田谷代田とは反対側の隣駅)の間の線路跡に昨年開業した「reload」(リロード)の脇を抜ける道。などなど。

 

reload-shimokita.com

 

 こうも私たちの日々の生活でお馴染みの場所が次々と出てくると、それだけでもこのドラマに親近感が湧くのは確かだ。ドラマそのものが良く出来ていてなかなか面白いだけに、尚更だ。これは残りの回も観ないと。

 

(「reload」脇を抜ける道にて。2022年9月5日撮影)

 

 それにしても、このところ下北沢と世田谷代田の間のあちこちを行き来する人が急に増えたなあと思っていたのだが、こういう事情があったとは。「silent」はかなり人気のあるドラマのようだから、わかりやすくドラマの画面に駅名が登場した世田谷代田駅をメインに、ロケ地巡りをする人々がこの辺りに来ているのだろう。納得だ。

 第1話の配信を観た数日後に、散歩で世田谷代田駅前を訪れると、駅の看板をバックに記念撮影する人や、ドラマの中で目黒蓮さんが座っていたベンチに代わる代わる座ってドラマと同じ仕草をする人々、駅の向かいの代田富士見橋の真ん中でドラマの場面を再現する風の人などを、ちらほらと見かけた。ドラマの人気は、確実にこの周辺の賑わいに貢献しているようだ。

 今や全国規模に成長したコーヒーや輸入食材のショップ「Kaldi」(カルディ)の発祥の地として、つとに名高い世田谷代田。だが、私が幼少の頃から新しい駅舎が完成する数年前までの数十年間は、実に閑散として何もないところだった。それがここ数年、少しずつ個性的な店が出てきて徐々に人が増え始めたところなので、このドラマの人気がこの近辺の盛り上がりを後押ししてくれるのは、それはそれで喜ばしいことだと思うのである。

 

 

 そのうちにドラマの内容についても、何か書ければ。モチーフやメタファー、隠喩の使い方や繰り返し方がとても巧みな物語構成。そして先述の世田谷代田やタワーレコード渋谷(ここももちろん私には超お馴染みの場所)にバンドのスピッツやLINE通話など、実在する事物を出すことで視聴者の共感度を上げる小わざの利かせ方。いろいろに「語りたくなる」要素が詰まったドラマのようである。

 とりあえず私としては、一昨年の大河ドラマ麒麟がくる」の帰蝶姫(川口春奈さん)と、昨年の大河ドラマ「青天を衝け」の民部公子さま(板垣李光人さん)が、姉弟としてキッチンに並んで立つ姿が、なんとも可笑しく微笑ましく感じてしまうのであった(笑)。

 

世田谷代田駅の近く、代田八幡神社にて。2022年1月2日撮影)

 

味が薄めなのは「当たり前」

 

 美味しいごはんの話が続きます。

 前回の日記で書いた「豚肉と里芋の梅高菜煮」からちょうど1週間後の、夕食の主菜に私の妻が作った料理が、豚肉とキャベツの味噌にんにく煮込み(上の写真)。前回同様、こちらも若山曜子さんの『フライパン煮込み』に掲載のレシピから登場。

 

 

 この本でのレシピ名は「豚バラとキャベツのみそにんにく煮込み」で、その名の通りバラ肉が使われている。だが私は脂身の多い肉が(お腹にくるから)苦手なので、妻は大抵ももやロースの端肉などを寄せ集めて売っている(だから安い)豚こま肉を使って調理してくれる。

 さらに、調味料もかなり量と種類を減らしている。元のレシピでは醤油が大さじ1入るのだが、味が濃くなりすぎるのでウチでは入れません。我が家は相当薄味志向、というよりほとんどの場合、調味料の量や種類をレシピ記載より減らすぐらいの味加減が、私たちにとってちょうど良いのです。

 これを読んでいるアナタが、万一にも「薄味=まずい」と思い込んでいる人だとしたら、私は面と向かって「この何も分かっていない愚か者め」と罵ってあげます(笑)。何百回でも。

 豆板醤のピリ辛味で補強されたニラとにんにくの組み合わせがなんといってもこの料理の「キモ」だが、若山さん曰く「ピリッとパンチの効いた、もつ煮込み風」とのこと。なるほど、味噌にニラとにんにくの組み合わせは、いかにも「もつ鍋っぽい」感じだ。

 

 

 若山曜子さんのすごいなあと思うところは、料理の守備範囲がとても幅広いこと。大学卒業後にパリへ留学して、パティシエやショコラティエなどのフランス国家資格(CAP)を取得した経歴から窺えるように、フランスのお菓子やフランス料理を最も得意とされているようだ。実際、お菓子づくりや家庭向けフランス料理の著書も多い。

 その一方で、この『フライパン煮込み』のレシピのような、普段の日本人の食卓に寄り添った料理づくりの提案もなさっている。ご自身が吸収した「洋」の良さと、日本の食文化で育まれた「和」の親しみやすさをうまく組み合わせて、いい感じに等身大な食生活を提供している、そんな印象なのだ。

 今調べたら、『フライパン煮込み』の続編が来月発売されるらしい。へええ、知らなかった。楽しみ。

 

(2022年10月29日投稿)

豚肉と里芋の梅高菜煮

 

 この日の夕食の主菜用にと私の妻が作った料理は、豚肉と里芋の梅高菜煮だった(上の写真)。

 我が家で最も出番が多い料理本のひとつ、若山曜子さんの『フライパン煮込み』掲載のレシピだ。

 今日の豚肉は、元レシピと同じく肩ロースの塊肉をカットして使っているので、よく煮込んで豚肉ならではの旨みがじっくりと染み出している。さらに、梅干しと高菜漬けという発酵食品がダブルで投入されているので、両方の風味と酸味とコクがよく発揮されて、味わいに深みが出てなんともいえない美味しさ。汁気もまた滋味溢るる旨みに満ちており、締めはご飯を投入して雑炊風にいただく。幸せいっぱいだ。

 里芋のねっとり感をまとったほくほく味も実に心地よい。私が「超じゃが芋好き」であるために我が家では芋といえばまずじゃが芋になるので、里芋が食卓にのぼることはそれほど多くない。この日も本当に久しぶりの登場なのだが、やっぱり里芋も美味しいなあ、実に味らしい味覚だなあと、しみじみ思うのであった。

 そういえばようやく秋も深まってきたこの頃である。

 

(2022年10月26日投稿)

コロナかもしれない

 

 前回の日記から2か月以上空いてしまった。

 一度途切れてしまうと、復帰するのにかなりの時間がかかってしまう。私の悪いところだ。

 前回の日記を書き上げてからほどなく、今からちょうど2か月前の7月25日に38度5分の高熱が出て、それから丸2週間寝込んでしまった。

 熱は1週間弱でなんとか下がったものの、体の中の風邪っぽさや不調や風邪由来の痛みがなかなか抜けず、発熱から2週間経ってようやく身体の中の「悪いもの」が完全に体内から抜けたように感じた。つまりは「完治」したわけだが、その間ほとんどベッドで過ごしたために体力がすっかり衰えてしまい、さらに2週間かけて徐々に体力を回復して、ようやく日常生活を取り戻した。熱を出してからほぼ1か月かかったことになる。今年は夏の一番盛りの時期をベッドで寝て過ごしたわけだ。凄まじい酷暑の日々を上手いことベッドでやり過ごした、ともいえるが(笑)。

 というわけでひと月もブランクが空いてしまったせいで、暇人なりにいろいろ滞ってしまい、それらをひとつひとつ片付けるのにさらにひと月。気がつけば秋分の日を過ぎて、世の中の景色はすっかり秋色に染まっている。

 あれは、新型コロナウイルスに感染したのだろうか。

 検査は全然しなかったので、今となっては知るよしもない。もちろんただの風邪だったのかもしれない。この直前の数日は私にしてはかなり予定が詰まってしまい、けっこう無理して動いたために疲労がとても溜まっていたのは確かなので、いかにも体調を崩しそうな状態ではあった。それでも、いきなり38度以上の高熱が出るというのはなかなかに尋常ではない。インフルエンザならありえるか。でもインフルはどちらかというと冬のもの。真夏に感染する確率はゼロではないだろうが、あの連日最高気温が35度近い凄まじい酷暑の中では、インフルのウイルス自体が生きてはゆけまい。コロナ感染がピークに達していた7月末ごろの状況を考えると、やはりあの時の私も「コロナに感染した」と見做すのがもっともあり得る気がする。皮肉な話ですが。

 どうして熱が出た時にコロナかどうかの検査をしなかったか、ですって?

 それはもちろん、検査を受けても何ひとつメリットがないから、です。

 検査してコロナに感染したとわかっても、ただそれだけでしょう。まだ承認されていないコロナの特効薬をもらえるわけじゃないし。せいぜいコロナ陽性の証明書をもらうくらい。私は現在いわゆる勤め仕事をしていない身なので、仕事を休むために証明書をもらう必要が全くないのだ。あとは地域の保健所にコロナ感染の連絡をして、その日の新規感染者数にカウントされるだけ。結局普通の風邪と同じ既存の解熱剤や風邪薬をもらう対処療法しか治す道はない。しかも私は固定薬疹という非常に厄介な体質の持ち主で(イブプロフェンアセトアミノフェンがダメ)、一般的によく使われる解熱剤や風邪薬のほとんどすべてを身体が受け付けないので、それすらもらえない(涙)。私が2週間も寝込んだのも、もちろんその薬アレルギーのせいである。解熱剤が使えず自然治癒に任せるしかないので、とっとと熱を下げる、という芸当が私にはできない(涙)。

 というわけで、高熱を押してわざわざコロナの検査をしている医者まで行き、高熱のまま何時間も待ってまで検査を受けるメリットが何もないのだ。むしろそんな状態で無理して出かけたら確実に病状を悪化させるだけだし、(コロナ感染だったら)無駄にウイルスを撒き散らすばかりだし(笑)。

 そもそも発熱してしまうと街なかの検査会場では受け付けてもらえず、コロナの検査を実施している(大抵は発熱外来のある)医療機関に行くしかない。(あの頃は市販の検査キットは軒並み売り切れだったので、自己検査もできなかった)。一応は高熱で朦朧となりながらも自宅の近くで検査をおこなっている医者を検索してみたが、もちろん家から歩いて10分以内とかの近距離にはそんな医者はない。比較的近い医療機関は発熱外来の予約がいっぱいで受けられるのは1週間後(もう治っているのでは?笑)とか、予約がない代わりに検査まで数時間待たされるとか、そんなのばかり。

 当たり前ですよね。あの時は2022年7月下旬、コロナ感染第7波のピークを迎えて感染者数はうなぎ上り。それなのにコロナ検査が可能な医療機関は限られているから、どこも陽性の証明書を求めて検査を待つ人々でいっぱい、数時間待ちは当たり前の状態。これじゃあ無理もない。特定の医療機関に負担が極端に集中している状態。やれやれ。早くインフルエンザのように、その辺の町医者でも簡単にコロナかどうかの検査ができるようにならないといけないのに。行政はそこに力を尽くすべきなのに。もう3年目なのに、いまだにこの体たらく。今の日本の行政がやっていることがいかに的外れなのか、当事者になると身に染みて本当によく分かる。やれやれです。

 

 

 ……と、ここまで書いたのが9月24日。最初の方の日付の表記を見て「あれ?」と不審に思われた方々、ごめんなさい。書きかけのまま見事に3週間以上放置してしまったのです。

 理由は簡単、この文章を書くうちに例によって目と首筋と肩がゴリゴリに痛むようになってしまって、書き進められなくなったのが発端。その後はずるずると止まってしまいました。

 というわけで改めて、熱を出して寝込んでから3か月近く、そして前回の日記から3か月以上経ちました(笑)。すっかり秋も深まったこの頃、とするりと口に出すのが躊躇われるほどに、つい先日まで妙に気温が高く、かと思うと真冬並みに冷え込んだりして、いよいよこの惑星もヤバくなってきたなと実感するばかりですが(笑)。

 あの時何より幸いだったのは、一緒に暮らす私の妻には何ひとつ症状が出なかったこと。おかげで夫婦ふたりとも寝込んでしまう危機を回避できて、妻が家のことを滞りなく進めることができたのは本当に幸いでした。

 それにしても、私が寝込むまではこのところ夫婦ふたりでずっと一緒に行動していたので、私がコロナに感染したのであれば間違いなく妻にも感染していたはず。なのになんともなかったということは、妻はいわゆる「無症状感染」だった公算が高い。だとしたらなんとラッキーなことか。私のように熱を出して寝込む事もなしに、コロナの抗体だけ得ることができたわけだから。コロナの抗体も(インフルのと同等であれば)一年くらい持続するのでは、と先日お会いしたお医者さんが仰っていたので、今更ながら夫婦ふたりで抗体検査を受けてみる価値はあるかもしれない。せっかく2週間も寝込んだのだから(笑)。

 

(写真は全て、2022年10月8日に東京・吉祥寺の井の頭公園にて撮影)