「炎のランナー」

炎のランナー アルティメット・エディション (初回限定生産) [DVD]
 夕食は豚しゃぶ鍋を早めに済ませ、夜はゆっくりと、先日購入した「炎のランナー アルティメット・エディション」のDVDを、妻と二人で観る。
 本当に懐かしい。この映画を劇場で観たのは中学3年のとき。時ならぬアカデミー賞受賞のおかげで、新宿の一番大きい劇場で上映されていたのだった。あの時のアカデミー賞の候補作の中では、事前の予想では「レッズ」と「黄昏」の二つが有力視されていて、「炎のランナー」なんかは完全にダーク・ホース扱いされていた。それが思わぬ作品賞に輝いたものだから、英国びいきの私としては嬉しかったなあ。映画を観て、ますます英国好きになったものだった。
 久しぶりにDVDで観て、てらいもなくまっすぐに生き方を貫こうとする若者たちがカッコいい、と改めて感じた。今ならこんなまっすぐな人間像は描けないかもしれないなあ。必要以上に派手な展開は避け、地道だが真摯にドラマを紡いでゆく。端正で粋。昨今ともすれば軽視されがちの、真面目なことのかっこよさ。それを素直に感じられる作品だ。
 また、最初に劇場で(20と数年前)観たときにはあまり感じなかった発見があったのは嬉しい。こちらが大人になったせいだろうか。たとえば、最後の400m決勝で、エリックが恍惚とした表情で走るさまは、牧師として信仰を貫いた彼にしか感じることのできない、神の栄光と喜びを感じながら走っているのだ、と今回初めて、深い実感を伴って気づいた。
 購入前に気になっていた「アメリカ劇場公開バージョン」も、私が観るところ、さほど大きな違いはなかったようで、特に違和感なく観ることができた。でも、特典ディスクの中に、冒頭の有名な浜辺を走るシーンのあとに入るはずの、彼らがクリケットをするシーンが「削除されたシーン」として収録されていたが、あれは確か劇場で観たときにはあったような記憶がある。気になったのはそれくらいかな。