でんぐりでんぐり

studio_unicorn20061216

 今日も平日の疲れがドッと出て、日中は家でダラダラと過ごす。だが、せっかくの週末にこれでは勿体ないと思い、夕方になってから妻と一緒に渋谷へ行く。
 さる筋から招待券をいただいていた(Nさん、ありがとうございます!)「スーパーエッシャー展」を観に、Bunkamuraザ・ミュージアムを訪れる。だまし絵を含むエッシャーEscherの版画作品は大好きなので、とても楽しみにしていたのだ。
 Bunkamuraザ・ミュージアムは、金・土曜日は夜9時まで開館。夜間なら空いているだろうと思っていたのだが、甘かった。会場内はすごい人。非常に混雑している。これも日本でのエッシャー人気の表れ&主催者のひとつである日本テレビの大々的な宣伝の賜物だろう(何しろ笑止千万な"イメージソング"まで用意していたのだから)。
 それともうひとつ驚いたのが、音声ガイドを使用している人の比率が異様に高いこと。会場の半分くらい(いや、それ以上)の人がヘッドホンを頭につけている。というのも、この展覧会の音声ガイドは、なんとニンテンドーDSLiteを使用しているのだ。当然簡単な映像もついていて、単なる音声ガイドにとどまらない鑑賞ガイドになっている模様。もちろんタッチペン仕様。確か森美術館だったかで、iPodを音声ガイドに使用しているケースはあったが、DSLiteを使っているのは初めて見た。そのものめずらしさも手伝って、これほどの鑑賞ガイド比率の高さの所以なのだろう。ガイドを操作したりじっくり聞きながら鑑賞している人が多いので、必然的に人の流れが遅くなり、さらに混雑に拍車をかけているようだ。やれやれ。
M.C. Escher M.C.エッシャー Icons Series (アイコン・シリーズ) M.C.エッシャー [DVD]
 ちなみに、我々はガイドを使わなかった。もっと空いていたら使ったかもしれないけれど。私がせっかちだというのもあるが。それに、我々夫婦は、数年前にこの同じBunkamuraで開催されたエッシャー展を観ていたので、エッシャーについて大まかなことは知っていたつもりだったのだ。
 さて、肝心の展覧会の内容だが、これが予想に反して、意外にもオーソドックス。主催者にテレビ局が入っているし、派手な宣伝ぶりだし、なにしろ「スーパー」と銘打っているくらいだから、さぞ会場展示も派手に、意表をつくようなことをやっているかと思っていたのだが、その意味ではやや肩透かし。出展作品そのものも、「昼と夜」や「描く手」、「滝」といった有名どころは出ていたが、(当然あるかと思っていた)かの大作「メタモルフォーゼ」が出ていなかったりして、ラインアップとしてはそれほど派手ではなかった。
 というわけで、派手さは無いのだが、けっこう学術的にしっかりとした展示にはなっていたのが、私としては嬉しかった。特に、いくつかの代表作には、その作品の完成に至るまでの習作やスケッチが多数展示されていて、エッシャーの制作過程が窺えたのはとても興味深かった。完成作品が版画なので当たり前のことだが、スケッチなどは左右反転で描かれている(完成した時点で左右反転する、というほうが正しいか)。だまし絵や数学的・幾何学的思考やグラフィカルな側面ばかり注目されがちなエッシャー作品だが、もうひとつとても重要なのは、これらの作品がほとんど全て「版画」であることだ。他の手段に拠らず、ひたすら版画の技法・制作過程を繰り返す中で、エッシャーは独自の世界を作っていったのだ。
1000ピース 昼と夜(エッシャー)[世界最小ジグソー] TW-1000-793
 展示作品の半分くらい(半分以上?)が数年前のエッシャー展でも観たことのある作品だった(版画だから、同じ作品の別プリントという可能性もあるが)。あの時の展覧会は、すべて長崎のハウステンボス美術館の所蔵作品で構成されていたはずだったから、今回もハウステンボスから相当数の作品が貸し出されているのだろう。なにしろハウステンボスは、エッシャー作品のコレクションにかけては日本一、いや世界でも有数なのだそうだから。
 場内には、作品をCG化した映像もあちこちで上映されていて、エッシャーが二次元で追求・表現しようとしたことがより分かりやすく理解できる。これもなかなか良い。中には、指で画面を触ると画像がゆがんだりする映像もあって、実に面白い。もしエッシャーが現代に生きていてパソコンを使っていたら、どんなことをしたのかな。ふとそう思った。
1000ピース 滝(エッシャー)[世界最小ジグソー] TW-1000-796
 さすが鳴り物入りの展覧会だけに商魂も逞しく、出口付近の売店では、カタログ以外にもなかなか魅力的なグッズがいろいろ販売されている。ロゴ入りのTシャツとCG作品を収録したDVDが欲しかったが、グッとガマンして物欲に耐え、会場を出た。ところが、ここに罠(?)があり、出口を出たところにガチャガチャ機が何台か設置されていたのだ。売られているのは、エッシャー作品に登場する奇妙な生き物たち6種類のフィギュア。ガチャガチャだから、どれが出るかはお楽しみ、というわけだ。一回300円。6種類の中でも、一番人気は「でんぐりでんぐり」"Curl-Up"のフィギュアらしい(写真)。これの誘惑にはさすがに勝てず、2回やってみた。そしたら2回とも同じ「滝」のフィギュア(作品の左下に出てくる不思議な植物のフィギュア)が出てきてしまった。トホホ。「滝」自体は欲しかったのでいいのだが、2つはさすがに……(笑)。エッシャー好きのid:wineさまにでも差し上げるとしよう。う〜ん、ガチャガチャだけやりに、もう一度来ようかな(これだけ出口の外にあるので、入場券がいらないのだ)。まんまと主催者の企みにはまったのだった(笑)。