カスティーリャの大地にて

studio_unicorn20090520

ビクトル・エリセ DVD-BOX - 挑戦/ミツバチのささやき/エル・スールミツバチのささやき [DVD]
 夜、妻と自転車で下高井戸シネマへ行き、レイトショー上映で映画「ミツバチのささやき」"El Espiritu de la Colmena"を観る。昨年末から観るのを楽しみにしていた映画だった(2008年12月9日の日記参照)が、ようやく観られたな。
 この映画を観るのは2度目。といっても、以前観たのはテレビ放映だったし20年以上も前のことで、正直ディテールはもちろんストーリーも覚えておらず「スペインの大地を舞台にした美しい映画だった」という印象だけが残っているのみだったので、今回はほとんど初見のような感覚で(笑)観ることができた。
 この「ミツバチのささやき」を含む「ビクトル・エリセDVD-BOX」が先ごろ発売されたが、そちらは全てリマスターされてより鮮明な映像になったらしいが、今回上映されたものがそのリマスター映像を使用したかどうかは分からない。しかし、(光量的に)暗い場面が多いこの映画の中で、そんな暗いシーンでも細部がけっこう判別できたので、多分リマスターされた映像を使っていたのだろうと思われる。
 なんといってもスペイン・カスティーリャの美しい映像が素晴らしい。荒涼とした大地、朽ちた建物、素朴な佇まいの村に年月を経た(領主の?)館。そしてヴィクトル・エリセ監督Victor Eriseによる、美しき映像の美学。ハンマースホイの室内画を連想させる扉の連なりや、年月を経た書き物机など。現実と幻想の交錯。物語の背景に滲む、スペイン内戦が人々に刻んだ瑕跡。
 半ば幻想の中に足を踏み入れてゆく少女アナの「無垢な時代」が終わりを告げるのだが、これはスペインという国そのものの「無垢な時代の終焉」なのかもしれない、とちょっと考えてしまった。
 1973年制作、主演のアナ・トレントAna Torrentは当時6歳だったそうだが、ということは今は……と、ここでふと気づく。アナ・トレントと私は同い年だということに。うわー。年月の過ぎたることよ。
(写真の夕景は、自宅の近所にて撮影)