誕生日と祝日と忌日と

 

 というわけで、妻の誕生日から5日後の5月17日は、私の誕生日。

 55歳になりました。ゾロ目だ(笑)。

 もう毎年同じことばかり書いていて誠に恐縮だが(でも書くけど)、5月17日は私の誕生日であると同時に、ノルウェーの事実上の建国記念日たる憲法記念日。毎年、有難いことに国を挙げて私の誕生日を祝ってくれる日である(これも毎年のお約束ということで失礼)。

 インスタグラムでのノルウェーの人々の投稿などを見る限りでは、新型コロナ禍による規制が厳しかった2年前(2020年5月17日の日記参照)に比べれば、かなり例年通りに賑やかな祝日の祝い方ができるようになった様子。何よりである。

 

 

 我が家でのお祝いとしては、苺のショートケーキを妻が作ってくれた。今年で3回目だ。今年も素敵な仕上がりだが、スポンジケーキを焼くのはなかなか難しいとのことで、今回も少々危ない橋(?)を渡るような進行だったらしい。見た目もお味もいうことなしだったが。

 ケーキ作りの最後は私も少しお手伝いした。少し温めたバターナイフで、生クリームの表面を撫でる。そうすると、表面がほんの少し溶けて滑らかな仕上がりになる。これが楽しくて、延々バターナイフでケーキを撫でまくってしまった(笑)。おかげで、ツルツルお肌の可愛い子になりました。過去2年のケーキは真ん中の苺がひとつだけだったが、今年のは3個に増やしてみた。いや、苺が余っていたからなのだが、より賑やかに(?)なったような気がする。

 

 

 というわけで楽しい誕生日を過ごしたのだが、なんとこの日に音楽家ヴァンゲリス氏Vangelisがお亡くなりになったとのこと。数日後に初めて訃報に接してびっくりした。

 私の誕生日で、ノルウェーの最も重要な祝日でもある日が、心から敬愛する音楽家の命日になってしまった。

 多感な中学生のときに「天国と地獄」"Heaven and Hell"の音楽に出会って、まさしく宇宙の彼方へ飛翔するかのように心を奪われたあの日。そして不朽の名作映画『ブレードランナー』"Blade Runner"の音楽がとても深く、そしてとても静かにこころの底に沈殿したあの日。ヴァンゲリス氏の音楽は常に私とともにあったし、これからもともに在り続けるだろう。

 ここ数年はもう新しい曲を発表することがない様子だったので、正直いうと半ば引退なのかなと思っていた。だが、改めて訃報に接すると、まだまだ何かを残してくれたのではないかと思えてしまう。誠に残念な思いでいっぱいだ。音楽界の不世出の至宝が、またひとつ消えてしまったような気がして。合掌。

(2022年5月23日投稿)